COCO湘南台は、神奈川県藤沢市に1999年4月に開設された、10名の高齢者が自立して生活するコミュナル・リビングである。COCOは、地域(Community)と協同(Cooperative)を意味し、テーマ「自立と共生」を表現している。
この施設を開発したのは藤沢市議会議員を24年間務めていた西条節子さん。彼女自身が右足関節に障害をもっていることもあり、活動テーマは主に福祉領域。海外の高齢者施設などを視察する中で、日本の多くの高齢者施設(例えば療養病院)では、高齢者の自立と尊厳が失われていることを実感した。
そこで、自らの手で「第三の人生を元気印で生きられる暮らし方を自分たちの手で開発したい」と考えるに至った。その経緯は、著書『10人10色の虹のマーチ 高齢者グループリビングCOCO湘南台』にまとめられている。[1]
関心のある人々に声をかけ、当初16人のメンバーで「バリアフリー高齢者住宅研究会」を開催、マクロ的視点から、介護や医療、福祉との関係の築き方、自立と共生が両立する暮らし方等、さまざまな視点から議論を展開していった。その結果、研究会開始から半年後、基本思想のアウトラインが形作られてきた。
①自立と共生の高齢者住宅……ふれあう新しいコミュニティ
②共同運営と分担………………共同出資と運営は自分たちで
③地域と生きる…………………地域のコミュニティとして役立つ
④健康に暮らす…………………地域の保健医療機関とのネットワーク
⑤元気印の発信基地……………新しい暮らし方の発信、実験を進める
こうした基本理念に基づき、開発されたのがCOCO湘南台である。自立した人々の共同生活の場と言う視点に基づいた生活の場という視点においては、その精神はコレクティブハウス「かんかん森」と大きく変わるところはない。
個人の占有スペースは適度な快適性が確保できる程度(25.06㎡)とされ。その代わりに食堂、ゲストスペース、コモンスペースを拡充するというのが基本的な考え方である。
一方、これに「高齢者」という視点が加わることで、施設構成と共同生活の内容に差異が生じてくる。具体的に現れてくるのは、かんかん森では個別にあった風呂などの施設は、将来の介護の可能性も考え共用のみとなり、バリアフリー、エレベータ設置がなされると同時に、メンバーの共同運営であった共用部の掃除、朝夕の食事なども外部のワーカーズコレクティブに委託されている。また、近隣の医療関係機関、訪問介護、介護支援センター、老健施設などとネットワーク関係を築くことが重要視されている。
運営組織としてはNPO組織、特定非営利法人COCO湘南による自立型の高齢者コミュナル・リビングが目指されている。
COCO湘南台に加えて、2003年神奈川県海老名市に「COCOありま」、2006年神奈川県藤沢市高倉に「COCOたかくら」が開設された。また居住施設ではなく、近隣高齢者の相談や各種イベントを開設する拠点として、COCO湘南台の隣接地に「COCOみちしるべ」が2008年に開設されている。