新しき村以降、日本においてもいくつかのコミュナル・リビングが生まれたが、1953年に京都で誕生し、それ以降、現在で活動を続ける日本最大・最多数の活動拠点を持つコミュナル・リビングが幸福山岸会(以下、ヤマギシ会)である。
同会の創始者は山岸巳代蔵である。活動当初は、彼が独自に開発した養鶏飼育法を普及するための組織としてスタートしたが、その後、彼の唱える理念、すなわち人と自然、人と人が一体のものとして生活すべきという「全人類幸福社会」思想に共鳴する人々が次第に集う組織となり、会の行動原理である「無所有、共用、共活」を実践する場として「社会実顕地」が各地に広がった。
1950年代に生まれたヤマギシ会は、1960年代末から70年代にかけては新左翼活動家たちの挫折と衰退の中で、彼らのオルタナティブ志向、すなわち反公害、農業、福祉への関心との共鳴もあり参加人員の拡大を果たした。加えて1980年代には子ども楽園村の設立で教育問題に悩む親たちの共感を得ることに成功し、さらなる拡大を果たした。ピークは「実顕地」は95年に日本全国に39カ所。98年にはメンバー数は4400人とピークを迎えたが、その後さまざまな社会批判を受けたこともあり、その後、実顕地数とメンバー数は減少している。
同会は2020年5月現在、実践活動の場としてのヤマギシズム社会実顕地(通称「ヤマギシの村」)を国内26カ所(海外7カ所)に構え、国内では約1500人の人々がそれぞれの地で共同生活を行っている。実顕地は、当初活動の地であった三重県、和歌山県を中心に、北海道から関東、北陸、中四国まで存在している。