1990年に冷戦構造は終結を向かえたが、キブツは思想背景から離れたかたちで現在も機能している。当初は、農業を中心とする共同体であったが、その後、工業へのシフトが進められた。また、子供は親元から離し、集団で育てる家や財産も含めた完全な共有制といった厳格なスタイルから、私有化もゆるやかに導入し、私有化された家で親子同居スタイルが現在の主流になりつつあるという。
現在、キブツの数は282を数え、人口は近年増加傾向で17万人を越えるという。(全国団体「キブツ運動」などによる)近年のイスラエルは、サイバーセキュリティ技術、軍事技術を中心に世界の最先端技術保有国として知られているが、キブツの中にも、そのような先端中核技術を保有している組織があるという。
少量の水で植物を栽培する「点滴灌漑」技術を保有するネタファム社は、キブツ・ハツェリム発祥。世界180の企業や政府機関のシステム防衛を請け負うササ・ソフトウェア社はキブツ・ササから生まれた。
このような先端技術が生まれる土壌がキブツ由来なのかどうかは不明であるが、共同生活を送る上で生まれる「暮らしやすさ」が、現在でもキブツに入りたいと考える人々を生んでいるようであり、その結果として高い技術を保有する人々をキブツで仲間化できているのかもしれない。オウエン、フーリエを起点として指向された万人が平等に暮らすことの出来る共同生活体は、共産主義が崩壊した今、実質的にキブツとしてのみ生き残っているのだと言えよう。