『コミュニティー 世界の共同生活体』(2005年、明鏡舎)は、著者金原義明氏によるヴァージニア州リッチモンド郊外ルイザに位置するツイン・オークス・コミュニティを中心とする共同生活体探訪記である。

米国には、コミューン、もしくはコミュニティと呼ばれるいくつかのコミュニティが存在している。本書で紹介されているツイン・オークス・コミュニティもそのひとつだ。

なかには映画「刑事ジョン・ブック」に登場してきたアーミッシュのように、宗教的背景から長年共同生活をおくるコミュニティもあるが、ツイン・オークス・コミュニティも含めた多くの現存コミュニティは、1960年代のヒッピー・カルチャー・・ムーブメントから生まれてきたものだ。

1967年に創設されたツイン・オークス・コミュニティ誕生のきっかけは、オペラント条件付けで有名な行動心理学者B・F・スキナーの発表した架空のユートピア小説『ウォールデン2(Walden Two)(1948、邦訳『心理学的ユートピア』)であったという。

これを読んで感激した創設メンバーが、『ウォールデン2』のようなコミュニティーを建設しようとして奮闘努力した結果生まれたのがコミュニティであった。

行動心理学が契機となり新たなコミュニティを求める動きが始まったというあたり、イスラエルのキブツをきっかけに心理学者ミニューチンによる家族療法が生まれたという歴史と併せて考えると、もしかすると心理学と共同生活体には深い関連があるのかもしれない。

さて、本書においては筆者が滞在したツイン・オークス・コミュニティの様子が、メンバーの具体的な行動も含めて描かれており、きわめて興味深い。

ツイン・オークス・コミュニティの基本ポリシーは、平等・共同(分け合うこと)・非暴力の三本柱である。このポリシーに従って、コミュニティーはおだやかに運営されている。

平等・共同の象徴は労働だ。コミュニティを維持していくために金銭を得る労働は、ハンモックの製造・販売、書籍や文献の索引つくり、豆腐製造などが中心である。またこれに加えて、食事の世話、建物の建設、維持、管理などといったコミュニティ運営のための業務も同じ労働である。これら労働は、知的労働が偉い、肉体的労働に価値があるといった価値判断は一切なされず、皆平等に同一時間同一労働として評価され、週42時間の労働が皆に課される。

子育てもコミュニティの共同作業である。少なくとも5才になるまでは、子どもたちは共同の家であるデガニア(Degania)に週3、4日泊まり、残りの日を両親と過ごすことになる。

労働の対価として、宿泊そして衣食住含めた生活必需品は、すべてコミュニティから無償で提供される、病気の治療費なども含めて日々の生活費はいっさいかからない。食事も3食すべて無償で提供される。

多少の紆余曲折はあったものの、創設以来約半世紀にわたって、このようなコミュニティが現在に至るまで維持継続されていることは、ある意味で驚きでもある。

当初は、『ウォールデン2』のような心理的動機付けをベースとした巨大コミュニティが目標とされたが、これは早々と軌道修正され、それ以降、ほぼ総数100名規模のコミュニティが運営・維持されている。運営に関しては、各々の作業をつかさどるマネージャー、およびコミュニティ全体の調整役となるプランナー数名が行う。権力が一カ所、少数の人間に集中することは注意深く避けられ、コミュニティ参加メンバーによる集団運営方式が採用されている。

本書を読むと、メンバーはさほど固定化されておらず、毎年数人が参加退出するゆるやかなネットワークが形成されている。一旦出て行ったメンバーが再び参加するのも自由である。このゆるさかさを維持しつづけるコミュニティの運営方式を確立したところが、半世紀ツイン・オークス・コミュニティが生きながらえて来た理由のひとつだろう。